捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
ここまで追いやられているランスを見たのは初めてだった。

今まで余裕綽々でいたランスが、ベルフォンヌ様を前にして一切の余裕を放棄している。


……凄い。

これが、王女ベルフォンヌ様の力なのね。


ランスですら言い訳ができないほどの説得力と威厳と。

……逆にランスが可哀想に思えるくらいだわ。


「アリシアにハッキリと言いなさい、ランスロット。その理由が言えたとき、アリシアの気持ちも変わるはずだわ。本当は私が言おうとしていたけれど、こういうことは自分の口から言うのが大事よね」

「……くっ」

「次の公務は他の騎士を連れて行くから、あなたはここでアリシアとちゃんと話し合いなさい。この部屋は気が済むまで使ってくれて構わないから」

そうランスに言ったところで、ベルフォンヌ様は私に視線を移した。

目がばちりと合って、思わず身体が跳ねる。


「そしてアリシアも、これからランスロットが話すことに真剣に耳を傾けて頂戴ね。その理由を知れば、ランスロットへの考えがきっと変わるはずから」


ベルフォンヌ様にそんな風に言われてしまっては、受け入れるしかできない。

小さな声で「はい」と言いながら頷くと、ベルフォンヌ様は安心したような表情を浮かべた。



「良かったわ。じゃあランスロット、頑張って」


ベルフォンヌ様はそう言いながらランスの方をポンと軽く叩くと、部屋から出ていく。



広い接見の間に、私とランスのふたりきり。


ランスは少し考えるように目線を下に向けたまま、無言で私の前に立っていた。
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