捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
『綺麗だろうアリシア。この国自慢の庭だそうだよ』
『ええ、お父様!早くこの庭を駆けてみたいと思っているところでした!』
馬車は城の門へと着き、父と共に馬車を下りた。
『ではアリシア、私がここに戻ってくるまでこの庭で遊んでいるといい。けれどあまり遠くに行かないように。思う以上に広いからね』
『はい!いってらっしゃいませ!』
父は城の侍従に案内され、そのまま城の中へと消えていく。
私は父の後ろ姿に軽く礼をして見送った後、庭に咲き誇る花たちへと向かって駆けた。
なんて気持ちいいんだろう。
こんなに走るのは久しぶり。
もちろん子供心に遊びたいという気持ちが無かったわけじゃないけれど、それ以上に母の近くにいたいと思っていた私は、遊ぶことを我慢してずっと母の元に寄り添っていた。
それはもしかしたら二度と会えなくなるかもしれないという恐怖に、いつも苛まれていたからだったと思う。
それだけ母の病気は一進一退を続けていた。
でも今日は珍しく母の声にも張りがあったし、何よりも母が私の背中を押してくれたし。
今くらいはいいよねって、我を忘れて走り回っていたと思う。