捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
散々走り回って、ちょうど息も切れ足が重くなりもつれ始めたころ、城の裏にある一本の大きな木の元へ辿り着いた。

ふさふさと枝に付いたたくさんの葉が、風に乗ってゆったりと揺れ、直射日光で汗ばむくらいの気候も、その木の下は日陰になっていて幾分か涼しく感じる。


はあはあ、と息を切らしながらそこで立ち止まると、何回か深呼吸をしたのち、木にもたれかかるようにして座った。


肌に触れる幹がひんやりとして、とても気持ちいい。


ぼんやりと鮮やかな色を放つ庭を見つめながら、思いっきり走れたことに満足していた。



それでもふと思い出すのは、母のこと。


母が元気になったら、今度は一緒にこの庭で遊びたい。

母と共に、この木陰で座りながら、あの歌を歌いたい。



私は目を瞑り風を感じながら、徐に口ずさむ。




いつも母が私に歌ってくれる、あの歌を。
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