捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
――そのとき、私の背後から不規則な音が聞こえた。

それは、地面を踏みしめる足音。


ハッと我に返り、咄嗟に振り向く。


『……せっかくいい歌声だったのに、邪魔をしてしまったかな』

そう言って私の近くへと歩み寄り、見下ろすようにして目の前に立った。

少年らしさが残りつつも、精鍛な顔立ちに子供ながらに思わずドキリとしてしまう。

見た目、私の兄よりも少し大きなお兄さんといったところだろうか。

『あなたは……?』

『私はランスロット。君は?』

『私は、アリシア。アリシア=ネリベル。ランスロット様はどうしてここへ?』

『今日は騎士団の入団式で城に来ていたんだ。庭を散策している途中で、君の歌が聞こえてきてね、つい』


『まあ、騎士団に入られたのね、おめでとうございます。私は父に連れられて来たの。父を待っている間、庭を駆け遊んでいたら疲れてしまって、それでたまたまここを見つけて休んでいたの。つい気持ちよくなって歌ってしまっていたわ。もし邪魔をしてしまったのなら、ごめんなさい』


『いや、そんなことはない。もう少し聞いていたいくらいだったよ』
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