捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
今はもうディアスの顔も、不思議と思い出せないほどに薄れている。
それと同時に、人を愛する気持ちも敬う気持ちも忘れてしまったみたいで、どう人を愛するのか、その過程すらも分からなくなってしまった。
――でも、これでいい。
このまま命が尽きるその日まで、今のままいられた方が楽。
父は無理矢理でも相手を探すって言っていたけれど、候補にされた方に申し訳ないわ。
だって、私はもう心を持たない人形のようになってしまったんだもの。
……そうね。
もし、そのときが来たら。
父には申し訳ないけれど、修道院への道を考えるしかないかもしれない。
それが一番、誰も傷付かない方法なのだと思うから……。