捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
シーモアは手慣れた手つきで、上半身が露わになるようにドレスを下ろすと、身体の隅々を診ていった。


「ランスロット様が騎士団へ入団した頃かねぇ、胸が苦しいとここに呼ばれたことがあってね。詳しく診ても特に悪いところはなく、原因が分からなかった。よくよく話を聞いてみると、ある人を思い出すたびに胸が締めつけられるような感覚になる、と言ったんだ。だから私は言ってやったんだよ、『ランスロット様、それは恋ですよ』とね」


シーモアは馬車で痛めた腕の部分に薬を塗りながら、肩を震わせて笑う。


「そう言ったときのランスロット様の驚いたような表情といったらね、今でも忘れられないよ。たぶん"恋"というものが、それほどまでに苦しいものだとは思わなかったんだろうねぇ」


「そんなにランスは……」


「ようやくその思いが実になったんだねぇ。私は感慨深いよ。そんなランスロット様に愛されたあなた様も、とて
も幸せだね」


私はランスにとって初恋の相手。

医者に相談するまでに、彼は私に思いを馳せていたなんて。



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