捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
そのときようやく、言葉をちゃんと発することができるようになった。
ランスは信じられないといったような、驚いた表情を浮かべたまま、今度は目をゆらゆらと泳がせている。
そして身体が動いたかと思えば、私の上に覆いかぶさるようにして寝台に倒れ込んだ。
「ちょ、ちょっと!ランスったら!」
しかしその声に反応はない。
ランスは私の頭の隣で顔を埋めたまま、なにも語ろうとはしなかった。
けれど、あることに気付く。
「……ランス?」
肩が少し震えている。
熱い吐息が、小刻みに耳へと掛かる。
それに、温かく湿ったようなものの感触も。
辛うじて動く両手をランスの身体に回し、背中をゆっくりと摩った。
「もしかして、……泣いているの?」