捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~


「さすがにそれはいけませんよ、旦那様」

と、私をまたシーツの海に沈めようと覆いかぶさったところで、部屋の扉が勢いよく開かれ、カストルが姿を現す。


咄嗟にランスが布を私の身体に掛け、素肌を見えないようにしてくれたが、そんなことよりもこの状況から逃げられそうなことに、安堵してしまう。


一方のランスは、とても不満そうな表情を浮かべて、カストルに対し舌打ちをして言った。



「カストル……、だから空気を読め、空気を」


「空気を読むのはあなたの方ですよ、旦那様。昨日シーモア様にあれだけ釘を刺されたというのに。ネリベル伯爵もアリシア様の帰りを、今か今かとお待ちになっていることでしょう。それにどれだけ仕事が溜まっているとお思いですか?」


部屋の入り口に立つカストルは、笑っているようでその周りに纏うオーラの威圧が凄まじい。

さすがのランスもそれを感じ取ったのか、渋々私から身体を離した。


「……分かった。仕方ない」

「アリシア様とのこれからの生活のためなら、書類を片付けることくらい容易いでしょう、旦那様?」

「ぐっ……」


さすがのランスもカストルのその言葉には言い返せず、スッと立ち上がると上着を羽織る。


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