捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
それから湯浴みで綺麗に身体を清め、身体を労わりながらゆっくりと帰り支度の準備をし、夕方仕事がひと段落ついたランスと共に屋敷へと戻った。

屋敷へ着くなり、父が飛び出すように家から出てきて、半分泣きながら私を強く抱きしめる。

父の先には、涙を堪える兄のバレッタの姿もあった。


つられて私も泣いてしまう。

父の心配する気持ちが痛いほどに伝わって、涙を流さずにはいられなかった。


「伯爵殿、遅くなってしまい申し訳なかった」


そんな私たちを後ろで見つめていたランスが、そう父に声を掛けた。

父は涙を服の袖で拭いながら私から身体を離し、大きく顔を左右に振る。


「いいえ、逆に礼を言わねばなりません。アリシアを守って頂いて本当にありがとうございます」

「そんな伯爵殿、礼など……。むしろ危険な目に合わせてしまったことを詫びなければいけません」

「無事にさえ帰ってくればいいのです、アリシアが無事でさえいれば。……侯爵様、どうかこれからもアリシアを守ってやってくださいまし」

「……ええもちろんです。これからは私が、いかなることがあろうとこの手でアリシアを守り、そして幸せにしてみせましょう」


揺るがない自信をその言葉から感じ取ったのか、父は安心したように満面の笑みを浮かべると、ランスの手を取ると固く握手をする。


「侯爵様、頼みましたぞ」


父がそう告げると、ランスは迷うことなく答えた。


「――はい」
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