捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
その日、父は正式にランスの縁談の申し込みを受け入れ、私は晴れて婚約者となった。


急遽その夜はランスも交えての晩餐となり、ランスはえらく父と兄にお酒を勧められて、普段はあまり酔わないランスもその日ばかりはかなり酔ってしまい、屋敷に戻れるような状況ではなく、客室の寝台で死んだように眠っている。


父も兄も同様にテーブルに突っ伏して潰れていたけれど、その顔はとても幸せそうだった。


こんなになるまで……と若干呆れてしまったが、自然と私も笑みが零れてしまう。


何気ないことで笑えるのがどれだけ幸せなことかと、そのとき改めて分かった。



ほわりと温かくなった胸元を、そっと押さえる。

そして、心の中で呟く。


――ねえ、お母様。


私、幸せになるわ。


これから大変なこともあるだろうし、苦しくて泣いてしまうことも、もちろんあるだろうけれど。

でもそれ以上に、素敵なことがたくさん待っているはず。


だって隣にランスがいて、そして惜しげもなく愛を注いでくれるから。

私を優しく抱きしめてくれるから。



たくさんの愛に囲まれて微笑む私を、どうか見守っていて欲しい。

これからも、ずっと。


……私のそばで。





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