捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
過去の恐怖からなかなか前に進めなかった私を、スカーレットはとても心配してくれていたのだと分かり、とても胸に染みた。
私にとって最高の親友。
彼女がいなければ、今の私はいないかもしれない。
「スカーレットも、そろそろ良い報告が聞けるかしら?」
「そうなると私たち、義理の姉妹になるのよね?ああ、なんだか想像しただけでワクワクしちゃう。これからも仲良くしていきましょうね、アリシア」
「ええ、もちろんよ。ずっと、ずっとよ」
そう言って私たちは手を取り合い、互いに笑い合う。
――その日は時間の許す限り、ふたりで語り合った。
途中、兄がスカーレットとふたりきりになりたいと、私たちの間に割り込んで来たけれど、今日だけは私と心ゆくまで話をさせて欲しいと、スカーレット自身が断ってしまった。
断られた兄は悲しそうな表情を浮かべていたが、でも私たちを見つめる眼差しはとても穏やかだ。
「兄をよろしくね、スカーレット」
――帰り際。
私が唐突にそう告げると、スカーレットは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。
とても幸せそうな笑顔に、心がじんわりと温かくなっていく。
ふたりの春も、もうすぐそこにあるのだと感じた。