捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「ごめんなさい、ちょっと疲れてしまって」
「まああれだけの人と話をしていたら、仕方ないことだな」
ランスは私の隣に来て、手すりに軽く寄りかかると、私の前にワイングラスを差し出した。
「乾杯しよう。これからの私たちを祝して」
「……ええ。ありがとうランス」
グラスの重なる音が響き、お互い口に運ぶ。
甘く仄かに渋さの残る葡萄酒は、身体中に染み渡るようにして熱を帯びた。
その熱を感じながら、月を見上げる。
闇にぽっかりと浮かぶ丸い球体は、幻想的な光を放っていた。
ふと視線を感じ、ランスに顔を向ける。
ランスは私をじっと見つめていた。
ドキリと胸が跳ねる。
戸惑いながらも、声を掛けた。