捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
しかし向かいに座るアーチャー様は、そんな私たちを見て声高らかに笑った。

突然笑われたものだから、驚いて目が点になってしまう。

な、なに?
どうしてそんなに可笑しいの?


「……なぜ笑うのです?」

「ククッ……、ああ失礼。いや、思っていた通りの反応でつい、ね。だが、言っとくけれど私は血迷ってなどいない。私は本気でお前を妻にしたいと思っているんだ」

「どうして!!」


我慢できず、立ち上がって声を荒げる。


からかっていないと言っていたけれど、どうしてもふざけているようにしか見えなかった。


本気で、だなんて、私のことを知らないアーチャー様が、どうして私を妻にしたいだなんて言えるの?

今まで話したこともない。

顔を合わせたのも、あの一年前の夜会でだけ。


しかもそれは、アーチャー様が私を見ていたのかどうかも定かじゃない。


「や、やめなさいアリシア。これ以上失礼を重ねるのは……」

「失礼なのはどっちなの!?これ以上馬鹿にされるのはゴメンだわ!もう部屋に帰ります!!」


その間もアーチャー様は少し笑みを残したまま、涼しい顔で座っている。

慌てふためく父をよそに、私はそのまま部屋の扉へと向かった。


そして、怒りの篭った手で勢いよく部屋の扉を開け、部屋を出ようとしたそのときだった。


「――また来よう、アリシア」


私は振り向かないまま返事もせず、そのまま扉を閉めると自室へと戻った。
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