捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~


「お帰りなさいませ、アリシア様。お話はもう終わられたのですか……?」


部屋へ戻るとアイリーンが心配そうに声を掛けてくれる。


走って戻ってきたわけじゃなく、少し早歩きで部屋へ戻って来ただけ。

なのに部屋に着いた頃には、息が上がり呼吸が荒くなってしまって、上手く言葉を話す余裕がなく、ただ頷くしかできなかった。


「大丈夫ですか?今お水をお持ちしますね」

「あ、あり、がとう……」


アイリーンは頷くと、水を取りに部屋を出ていく。

さほど暑くもないのに汗がじわりと額に滲み、それをドレスの袖で拭うと、部屋の窓を開けた。

荒む呼吸を整えるように、大きく外の空気を吸い込んでゆっくりと吐く。


外は木々の瑞々しい香りが漂っていた。


空は一面真っ青で、白い塊はどこにも見当たらない。


新鮮な空気を何回か吸い込んでは吐き、ようやく少しずつ落ち着きを取り戻す。

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