捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

……やらかしてしまった。

侯爵家の当主に対して、とんでもない言葉を投げつけてしまったわ。

でも、仕方ないのよ。

だってあれはどう考えても、私をからかっているようにしか思えなかったんだもの。


頭の中が冷静になるにつれ、自分の仕出かしたことの大きさに気付き反省する。

だけど、どうしてもアーチャー様が自分に求婚するのは信じられずにいた。


アーチャー様は噂だと仰っていたけれど、噂でも王女様とのお話があったくらいのお人。

そんな人が、なにも取り柄もない私を選ぶなんて、どう考えてもあり得ないもの。


ましてや私は王の命により、ディアスから婚約破棄された女よ?

そんな女に対してどうして……。


アイリーンが部屋へと戻り、私に水の入ったコップを差し出した。

それを受け取ると、勢いよく飲み干す。


冷たい液体が、体内へと落ちるのをはっきりと感じる。


……これは夢じゃない。

現実に起きていることなのよね。


幻だと思いたかった。

全て幻想なのだと。


でも、違う。

これは紛れもなく、事実なのだ。


< 32 / 242 >

この作品をシェア

pagetop