捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
……やらかしてしまった。
侯爵家の当主に対して、とんでもない言葉を投げつけてしまったわ。
でも、仕方ないのよ。
だってあれはどう考えても、私をからかっているようにしか思えなかったんだもの。
頭の中が冷静になるにつれ、自分の仕出かしたことの大きさに気付き反省する。
だけど、どうしてもアーチャー様が自分に求婚するのは信じられずにいた。
アーチャー様は噂だと仰っていたけれど、噂でも王女様とのお話があったくらいのお人。
そんな人が、なにも取り柄もない私を選ぶなんて、どう考えてもあり得ないもの。
ましてや私は王の命により、ディアスから婚約破棄された女よ?
そんな女に対してどうして……。
アイリーンが部屋へと戻り、私に水の入ったコップを差し出した。
それを受け取ると、勢いよく飲み干す。
冷たい液体が、体内へと落ちるのをはっきりと感じる。
……これは夢じゃない。
現実に起きていることなのよね。
幻だと思いたかった。
全て幻想なのだと。
でも、違う。
これは紛れもなく、事実なのだ。