捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

私は相変わらず、部屋でただソファーに座っていただけ。

ぼんやりとした意識の中で、時が過ぎるのを待っていた。


屋敷の中は昼でも比較的静かだった。

廊下を歩く侍従や、侍女達の話し声がたまに扉越しに聞こえてくるだけの、普段は静かな空間。


そこに滅多に聞くことのない、早い足どりの一際大きな音が近付く。

その音に朧げな私の意識が、一瞬で現実に引き戻された。


「アリシア!!アリシアはいるか!!」


父は扉もノックせずに、部屋の扉を勢いよく開けた。

何やら只事ではない表情。

その表情に、嫌な予感がよぎる。


「どうなさったの?お父様」

「い、いらっしゃったんだよ!諦めたわけではないらしい!」


父は混乱しているのか、上手く内容を話せないでいた。

ただ、"諦めたわけではない"という言葉で、その内容を察してしまう。


「え……?ちょ、ちょっと待って。まさか」


「そのまさかだ!いらっしゃったんだよ!侯爵様が!!」


< 37 / 242 >

この作品をシェア

pagetop