捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「……分かったわ、お父様。アーチャー様の所へ行きます」
私がそう言うと、父はホッとしたような表情を見せた。
「お、おお、アリシア。分かってくれたのならいいんだ」
「でも会うに及んでひとつ、お願いがあるのだけれど」
「なんだ?」
「アーチャー様とふたりきりにして貰えないかしら。……お父様が隣にいると、真意を話してくれないかもしれないから」
その言葉をきくないなや、父の表情が強張った。
その表情の意味が、私にはよく分かる。
密室の空間に男女ふたりだけ。
いくら侯爵様とはいえ、その状態が父にとっては不安なのだろう。
「……大丈夫よ、お父様。何かあった時は、その時は大きな声で助けを呼ぶから」
そんな父を心配させまいと、笑顔を無理矢理作って見せる。
それでも父はその表情を崩す事はなかった。
しかし最終的には、私の願いを受け入れてくれた。
「う、ううむ。分かった、そこまでアリシアが言うのなら……仕方ない」
こうして私達はアーチャー様の待つ応接室へと向かった。