捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
3攻防戦の始まり
応接室の中は、紅茶のいい香りが漂っている。
この芳醇な香りは特別な客人の為にしか出さない、最高級の茶葉を使用した紅茶だ。
アーチャー様は優雅にその紅茶を嗜んでいたが、私が部屋へと入ると、手に持っていたカップを置き視線をこちらに向ける。
そして私の顔を見るなり、フッと笑った。
「おや、やけに機嫌が悪そうな顔をしているな」
どうやら一目見て分かってしまうくらい、顔に出てしまっていたらしい。
本来は嫌でも笑顔で出迎えなければいけないのに、笑顔を作ることができないほど気持ちは昂っている。
反して隣にいる父はおどおどとしながら、アーチャー様の様子を伺っていた。
私がこんな表情でいることで、アーチャー様が気分を害さないかと心配なのだろう。
「お父様、大丈夫よ」
アーチャー様に聞こえないように小声で父に話し、部屋から出ていくように促す。
だが、なかなか出ていこうとはしなかった。
「ほ、本当に大丈夫なんだろうな?な、なるべく穏便に……」
「分かったってば。なるべく……気を付けるわ」
「その返事、信用できん」
「信用もなにも約束したわよね?お父様が出ていかないなら、私がこのまま帰るわ」
「う、うぐぐ……」
父は私の態度に余計不安を募らせていて、納得できないようだったが、無理矢理部屋から追い出した。