捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「では、なにかこの結婚に裏があるのではないの?私達を利用する為に結婚という方法を取らざるを得なかった、とか。今は私しかいないわ。正直に答えて」
「別に。そんなものはない。私がこの家を利用してなんの得がある?聞かなくてもそのくらいは分かっているんじゃないか?」
「そ、そうだけど。でも私が知らないだけで、良からぬ陰謀でも」
「ハハッそうだな……、ネリベル伯爵がもう少し重要な地位に就いていたなら、少なからずあったかもしれないな。しかしこう言っては悪いが、ネリベル家はどこにでもある、ただのいち伯爵にしか過ぎない。私達からすれば利用すべき存在ではない」
ここに至るまで、ほぼ冗談ぽく話していたが、総じてその瞳は一切揺がなかった。
その瞳だけを見ても、アーチャー様が嘘を言っているようには思えない。
つまり、この結婚に政治的な利用をするために仕組まれたものではない、ということだ。
……まあ、ね。
そんなはっきりと言われなくても、分かっていたわよ。
聞くだけ無駄だとは薄々感じてはいたけれど、そうハッキリと言われると、自分の地位がどれだけの価値なのかを、思い知らされる。
そうよね。
私の家なんてそんなもんよね。
代々続いているとはいえ、アーチャー家から見たら大した家ではないもの。