捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
『では、次は二日後に。……私の愛する婚約者よ』
その言葉を思い出して、大きくため息をついた。
「アリシア様?」
「ああどうしよう。二日後が来るのがとても憂鬱だわ……」
いまさら断った所で、アーチャー様は聞き入れてはくれないだろう。
仮病を使っても、多分同じ。
だから二日後、アーチャー様と会うしか道はない。
私の感じる恐怖は、言い換えれば不安だった。
翼が折れ、飛べずに籠の中に閉じこもる私を、彼は光り眩しい大空へと出そうとする。
差し出した手は、とても心強いもの。
その手を取れば、私にはまだ明るい未来があるのだと思う。
だけど、途中でその手を離されてしまったら?
人の気持ちは永遠じゃない。
気持ちが変わってしまうって、嫌なほど思い知らされたから。
飛べない私は、そのまま真っ逆さまに落ちていくだけだろう。
その手がいつ離されるのか、それが不安でしかたないの。
一度折れてしまった翼は、二度と元に戻ることはないから。
そうなってしまえば、私はもうこの世で息ができなくなってしまう。
もう傷付きたくないのよ。
裏切られて涙を流すのは、もうゴメンなの。
だから、これ以上アーチャー様には関わりたくないのよ……。