捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「目の前に餌を垂らされた所で、それに食いつくほど飢えた魚ではありませんよ、私は」
「食らいつくような女であれば、私も本気で好きにはならなかった。そんな女じゃないことくらい知っているさ」
……じゃあなに!
そう声を荒げたくなるのを、必死に抑えた。
いつまで経ってもアーチャー様は余裕綽々。
その態度が余計に私の神経を逆なでする。
「ただ、話をするだけだ。なんてことない、ただのたわいのない話。そこから私がどんな人間かが分かると思う。嫌いか好きか、それは知っていく中で判断すればいい。なにも知らずに最初から拒絶するのは間違っていないか?」
「それは……」
「ただただ時間が過ぎるのを待つだけの生活を望むにしても、その時間はあまりにも長過ぎる。ちょっとした暇つぶしだ、私の話につき合ってくれてもいいじゃないか。私はアリシアとずっと話がしたくて堪らなかった。もし仮にアリシアが私を好きにならず、この婚約が無くなったとしても、私の願いを少しは聞き入れてくれたって、時間の無駄じゃないだろう?」
本当にこの人は話が上手い。
断れないような言葉の選び方に、どう答えていいか分からなくなる。
たわいのない話をアーチャー様とするって、一体なにを?
話すことなんて、なにもないのに。
「……青き空に、純白の鳥達が舞う。祝福の鐘鳴り響き、神はふたりに微笑みかける」