捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
おもむろにアーチャー様が小さな声で口ずさむ。


その詩を聴いて、ドクリと大きく胸が鳴った。


「な……」

なぜ、その歌を……!?


「その顔を見ると忘れてはいないようだな。アリシアは歌が上手だった。……まだ歌っているのか?」


そう言ってアーチャー様は笑みを見せた。



その歌は、母がよく小さい頃から私に歌い聴かせてくれたもの。

母の家に伝わる子守歌のようなもので、広く知れ渡る歌ではない。


病に倒れたあとも、体調がいいときは私を傍らに座らせて歌ってくれた。

普段は弱々しい声の母も、そのときばかりは透き通った綺麗な声を出し、とても気持ちよさそうに歌う。

そして歌い終わったあと、必ず私に『必ず幸せになるのよ』と言って、頭を撫でてくれるのだった。


私は母の歌う姿が大好きで。

撫でてくれるその手が大好きで。

いつしか私も口ずさんで歌うようになっていたのだけど、母が亡くなってからは歌うことは無くなっていた。


私と母を繋ぐもの。

母から贈られた唯一のもの。


身内以外は誰も知らないはずなのに。

どうしてアーチャー様がこの歌を知っているの!?

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