捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「ああもう……。どうして私ばかりがこんな目に」
「でもいいじゃない。相手は誰もが羨むアーチャー侯爵様よ?」
「でも私はそんな気になれないんだもの、何の意味もないわ。私はひとりがいいのよ、もうこのままひとりで生きていきたいのよ」
「あ、そう言えば……」
スカーレットは、突然ハッと何かに気付いたような表情を浮かべる。
「あなたの元婚約者のことだけれどね」
「……なに?」
「結婚したそうよ。でも相手は聞いて驚かないで、なんの位も持たないただの庶民の娘なの。実はあなたと婚約破棄をした後、彼の父によって伯爵の位を剥奪され、そして勘当されたそうなの。今は彼の弟がその伯爵の名を継いでいるらしいのだけれど」
スカーレットの話にあまりにも驚愕し、頭の中が真っ白になる。
ディアスが、勘当?
どうしてそんな事態になっているの。
「ということは、ディアスはもう貴族ではない、と?」
「ええ。今ではただの庶民よ。しかもこの国の外れ、ベルキスという小さな町にいるそうなの。そこで商いをしている家の娘と結婚した、と聞いたわ」