捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「あまり考え込まないことよ。ディアスの件はもう一年も前に終わったことなのだし。これ以上深入りするのは危険な気がするわ。現に、この件の真相について本来なら噂が飛び交ってもいいはずなのに、何故かそれだけは噂が聞こえてこない。おかしいでしょう?だから結果を事実として受け止めて終わるのが一番いいと思う」
「……そうね」
「教えなかったほうが良かったかしら」
「ううん、いずれ分かることだと思うから。私が屋敷に篭る以上は知り得ないけれど、でも必ずどこかで知ったはず。だからいいのよ。……それに、ディアスが結婚したと聞いても、それ自体になんの感情も生まれなかったもの。多分、私の中ではもう浄化されたのよね」
初めはディアスという名を思い出すだけで、胸が引き裂かれそうなくらい辛い思いをしたのに、今はもう名を聞いてもなんとも思わない。
貴族でなくなったという点に関して残念だとは思うが、それだけのことをしてしまったのだろうから、同情する余地もない。
残酷だけれど、それが今の私の答え。
一年という月日が、少しずつ私の心を癒し、彼のことを忘れさせてくれたのだと思った。
「……それよりもスカーレット、あなたはどうなの?あの彼とはそれ以降どうなったの?」
「とっくに終わったわよ。思った感じと違ったの。表向きでは優しかったのに、付き合っていくうちに徐々に本性を現していって、中身は傲慢な内弁慶だったわ」
「あら、残念。でもスカーレットならすぐにでもいい人が見つかるわよ」
「そうだといいけどね。なかなかうまくいかないものね」