捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
そんな母を見ていたからなのか、兄は今、医者になるべく勉学に励んでいる。


医者になるまでの道のりは長い。


兄が医者になると決めたのは母が亡くなってからだったため、当初、父は医者になるのを反対した。

しかし兄は反対を押し切って、飛び出すように家を出て、そして今に至る。

もちろん今では父も兄のことを応援し、この家に一人前の医者として戻ってくるまで待っているわけだけど。


あのときは、大変だった。

屋敷内がギスギスしていて、心苦しい毎日だったもの。


……に、しても。

このふたり、少しいい感じじゃない?


ふたりは私を指し置き、話に花を咲かせていた。

それぞれの表情を見る限り、どちらもまんざらではない様子だ。


「気が合いそうじゃないの、おふたりとも。とてもお似合いね」


なんてわざとけしかけてみると、ふたりは私の言葉に反応して、お互いに恥ずかしがっている。


……あら。

ここのふたり、意外とこのまま上手くいきそうじゃないの。


結婚に夢見ていたスカーレット。

今まで好む男性のタイプを知る限り、優しい男であるのに共通している。

兄はこの通り少し早とちりするところはあっても、とても優しくて気遣いのできる人間。

スカーレットには、ぴったり当てはまる男性だ。


……もしかしたら、いい話が聞けるのもそう遠くはないのかもしれないわね。

なんて、ふたりを見て思った。
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