捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
ランスに視線を移す。
何故かランスは目を大きくして、驚いたように私を見つめていた。
普段見ない表情に、また胸がときめく。
「……?どうなさられたのですか?」
「あ、いや、あの……」
ランスにしては珍しい取り乱しよう。
いつもは冷静沈着な人なのに……。
「ランス?」
理由を語らないランスに対し名を呼びかけると、照れたように頭を掻きながら、こう答えた。
「初めて私の前で、自然な笑顔を見せてくれたなと、思ってな……」
そう言われてふと気付く。
……そうか、私今までランスの前で笑ったことなかったわ。
これまでほとんどが、怒っているか泣いているかの表情しか見せていなかった。
ランスは初めてだったのね、私が笑う顔を見たのは。
でもまさか、ほんの少し笑っただけで、こんなにも取り乱してしまうなんて。