捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「意外と、可愛いお人なのね」

「それは、あまり嬉しくないな」

「うふふ、だって可愛いんですもの」

「……ったく、あまりからかうんじゃない。いい加減にしないと、その口を塞ぐぞ?」


そう意地悪そうに言うと、私の顎に手を掛け上げた。

思わず唇をギュッと噤み、顔を赤らめる。


目の前に映るのは、妖艶な笑みを浮かべた彼の美しい顔だった。

「あ……」


逃れたいのに逃れられない。

魔術にかかったように、その瞳から目を離せない。


「お前の笑顔ももちろん好きだが、私を煽るような色気のある、その困った表情もまたそそるな」


ランスはそれ以上なにもせず、私の顎から手を放す。


放れてもなお、私の胸の高鳴りは収まらなかった。


どれを取っても、全て彼の方が上手。

私はいとも簡単に、彼の手のひらで転がされてしまう。


……悔しい。

すぐ翻弄されてしまうのがとても。



ランスはなに食わぬ顔で部屋を見渡している。

未だ動揺しているのは私だけだった。
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