捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「……どうして、か。その理由を聞いたところで、お前の得にはならない。知らない方が身のためだ」
予想通りランスは理由を話そうとはしなかった。
深く突っ込んでもいいのかもしれないが、先程の表情を見てしまった後ではそれもできない。
私は俯いて、やり過ごそうとする。
しかし、それで話は終わらなかった。
「まだ気になるのか?」
「え?」
「お前の心の中には、まだアイツが存在しているのか?」
ランスがソファーから立ち上がったかと思ったら、その瞬間に私の身体が宙に浮いた。
気付けば私はランスに横抱きに抱えられていた。
そしてそのまま寝台へと向かうと、乱雑に投げ出される。
「……っ!」
両手はランスの手によって拘束され、ランスが覆いかぶさるようにして身体に重圧がかかり、身動きが取れない。
これは。
この状態は……!!
まずいと思い逃れようとするが、私の手首は強く押し付けられていて、指を動かすことすら困難な状態だ。
ランスは今までにない怒りの表情で私を見下ろしている。
一気に血の気が引く。
「忘れられないと言うなら、今ここで忘れさせてやろう。アリシアの頭の中を私でいっぱいにしてやる」