捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
ランスは冷たくそう言い放つと、私の唇を貪るようにして塞いだ。

「んうっ!」

優しさなんて微塵も感じられない、乱暴な口づけに顔が歪む。


違うの……!

そうじゃない。私の中にもうディアスは……!



そう言いたいのに、一向に離れてはくれない。


「んんっ……、う……」

捕まれた手首が痛む。

そこで血の流れが止められて、手先が冷えていくのが分かった。


自然と涙が溢れて、嗚咽が漏れる。

それに気付いてランスは我に返ったのか、ようやく唇を離してくれた。


「……泣いたって無駄だ」


しかし放たれる言葉は冷たい。

私は泣きながらも言い返した。


「ちが、違うのよ……っ。私の中でもうディアスのことは終わっているのっ……!」



私が知りたかったのは、なぜ勘当されてしまったのか、ただそれだけのこと。


私に向けていた笑顔の裏で、彼はどんな悪魔の顔をしていたのか。

本当の彼は、どんな人だったのか。


ただそれが知りたかっただけなのに。

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