捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
両手にかかった圧力が少し緩む。

一気に手全体に血が巡り、急激に温もりを取り戻す。


「……嘘ではないんだな?」

ランスの射抜くような眼力に怯みそうになるも、私は負けじと言い返した。

「嘘なわけないでしょう!?現に結婚したとスカーレットから聞かされても、なんとも思わなかったんだから!私の心の中にまだ存在していたとするなら、意地でもあなたには会わないわよっ!」


そう言ったところでようやく身体が離れ、私から一気に圧力が消えた。

先程までの殺気立った空気はもうそこにはない。

乱れたドレスを直しながら上半身を起こすと、ランスは寝台に腰掛け少し安心したような表情を浮かべていた。


「すまない、頭に血が昇ってしまった」

「……昇り過ぎよ」


涙をドレスの袖で拭き、気持ちを落ち着かせるように深く息を吐いた。


これで二回目。

また口づけをされてしまった。

……どうしてこう、ランスは乱暴な口づけしかできないのよ。

触れるような優しい口づけをしてくれたなら、私だってこんなに嫌な思いをすることなんて……。


……って。

なにを考えているの、私は!


自分の頭の中から変な妄想をかき消そうと、大きく頭を左右に振る。

突然そんな動きをしたものだから、隣にいたランスは大きく身体を跳ねらせ驚いた。

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