捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「どうした?」
「い、いえ。……なんでもないわ」
どうしたっていうの、私。
まるで、その優しい口づけを待っているかのような、そんな……。
別に好きなわけじゃない。
ランスなんて、これっぽっちも興味なんかないはずなのに。
……変なの。
また涙が溢れてくる。
その涙がどんな意味を持ち、どの感情から流れ出てくるものなのか、自分自身も分からない。
ただなぜか胸が苦しくて、止めようとしているのに止まらかった。
「……ごめん、悪かった」
涙を見せまいと俯いた私を、ランスは横から手を回して抱きしめた。
ふわりと私を包み込むように、優しく。
――刹那、私の胸が大きく高鳴る。
安心と、それとはまた違った感覚。
なぜだろう、その腕の中がとても居心地がいい。