捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「もうこんなことはしないと約束する。だから私を"怖い"と思わないでくれ」
「怖いって……」
そのときのランスがどんな表情をしていたのかは、すっぽりと胸元に顔が覆われていて見えなかったが、……なんとなく、とても不安そうな顔をしていたんじゃないかと思った。
だって私の身体に回した手が、少しだけ震えているように感じたから。
いつもの私なら、思いっきり拒絶していたことだろう。
でもこのときの私は、拒絶どころかその腕の中から離れられないでいる。
それはその中が居心地がよく感じたことももちろんだけれど、なによりも今のランスは、まるで幼い子供のようで。
拒絶してしまったら可哀想だと思ってしまったのも、離れられない要因だった。
「大丈夫よ、ランス。そんな風には思わないわ。……驚きはしたけれど」
「本当か?信じていいか?」
「もう、しつこいわね。嘘なんか言わないわよ」
そう言ってようやくランスの身体が私から離れ、そしてホッとしたような笑みを見せた。