捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
――翌日。

いつもよりも早めに起き出掛ける準備をしていたが、まだ終わらないうちにランスは屋敷に訪れた。

慌てて部屋にやって来た父が、早く支度を済ませるようにと呼びに来たことで、初めてそれを知り驚く。

こんなに早く来るなんて思ってもみなかったから、そう急かされて私も慌てて準備をする。


「……こんなに早く来るなんて思ってもみなかったわよ」


ランスの待つ応接室の扉を開けるなり、私は恨み節のようにそう話した。


「挨拶が先じゃないか?おはよう、アリシア」

「おはよう……、ございます」


朝もまだ早いというのに、ランスはとても爽やかな笑みを浮かべている。

遠出をするからか身体には重厚な鎧と藍色のマント、腰には繊細な彫刻が成された柄が特徴的な長剣が、鞘に収められぶら下がっていた。

ランスの鎧姿を見たのは初めてだった。

さらに醸し出される威厳、私の心がドキリと高鳴る。


「ほう……」

そんなランスは私をまじまじと見ながら、ため息を零した。


「なに……?」

「いや、普段のドレス姿からでは分からなかったが、足も長くほどほどに肉付きもあって、いい形をしている。……抱き心地が良さそうだな」

「い……!?」

< 97 / 242 >

この作品をシェア

pagetop