捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~
「メデュール」

ランスが声を掛けると、頭を一回上下に振るわせ鳴いた。

凛々しい顔をしているメデュールも、ランスに首元を撫でられるととても嬉しそうな顔をする。

互いの信頼関係がしっかりと出来上がっているのが、そのメデュールの態度だけでも分かった。


「手を貸そう。乗ってくれ」

ランスが私の身体を支え、メデュールに乗る。

私がしっかりと座ったのを見届けてから、その後ろにランスは軽々と跨いで乗った。


私の身体を包み込むようにして、ランス手綱を握る。

鎧特有の無機質な冷たさが、背中にじんわりと伝わった。


ランスの生暖かな吐息が耳元に掛かり、少しこそばゆい。


「私が後ろからアリシアを支えているから、怖がらなくてもいいぞ。お前はしっかりと鞍の縁を掴んでいろ」

「は、はいっ!」

「じゃあ、動くぞ」


手綱を上下に振りメデュールに合図すると、メデュールは勢いよく走り出す。

今までに経験したことのない早さに思わずぐっと手に力が篭り、目を瞑った。
< 99 / 242 >

この作品をシェア

pagetop