ミツバチジュエル
☆トラブルメーカー☆
「いらっしゃいませ」
目の前に立つ、大柄で短髪の男をにこやかに迎えながらお辞儀をする。
今日はいつものジーンズにTシャツではなかった。
一応、ジュエリーショップに行くということで、ネクタイこそしていないけれど、ジャケット着用というところはまあ、評価してあげよう。
「……このショーケースの端から端まで全部いただこうか」
「そうですね、ざっと見積もってこの位かと……」
私が電卓を取り出そうとしたその時、彼の口から場に合わない言葉が飛び出した。
「そこはツッコむべきだろうが! ボケ返してどうする!」
「いえ、お客様にツッコむなんてとんでもないことでございます」
ニヤニヤしながら私が言葉を返すと、彼が露骨に嫌な顔をした。
嫌な顔までいい男はちょっと違う。
苦みがいいスパイスになっている。
鑑賞するだけならいい相手なのにもったいない、と思いつつ、今日の要件を思い出す。
「あのなぁ、咲、客と店員ごっこはもういいから。要件は何だ?」
「その前にお客様、ちょっとこちらにどうぞ」