ミツバチジュエル
店内の奥にあるソファに案内しながら、こっそりと耳打ちする。
「朝イチで来たお客様に色々聞いたんだから。今まで貴斗が切断した指輪、どれも切り方がイマイチで余計な修理代がかかってるの」
「俺だって好きで切ってんじゃねーぞ。だからフォローはそっちにお……頼んでるんだろうが」
「あ、今『押し付ける』って言おうとしたでしょ。あのね、切り方ひとつで全然修理代金が違うの。だから、最初からうちに回してくれるか、正しい切り方を覚えてくれるか、どちらかにしてよね」
私に促されて白いソファに座った貴斗は、眉間に皺を寄せながら足を組んだ。
長い足を持て余すように無造作に組んだその一瞬の動きにも、何だか人の視線を釘付けにする魔法がかかっているようだ。
「俺だってできればすぐ咲に回したいよ。でもさ、ここで切るのって有料なんだろ? みんな『指輪は消防署へ行けばタダで切ってくれる』って知ってるから、宝石店には行かない。そっちもちゃんと『うちで上手に切れます』って宣伝しろよ」