ミツバチジュエル
テーブルに注文した食べ物を置き、早速いつものように話しはじめる。
「せっかくの休みに呼び出しちゃって、ちょっとすまないな~、なんて思ったり……してないからねっ! 家でゴロゴロするよりずっと有意義な休日だったでしょ?」
「いいトシしてまだツンデレかよ。そんなんだから男もいないんだぞ」
「それは貴斗も同じでしょ! 大きなお世話なんだから」
貴斗には1年ほど前まで付き合っていた彼女がいたらしい。
そして私も同じ頃、お店の上司にずっと片思いしていた。
だけど、報われないまま、その恋は終わった。
親切に仕事を教えてくれて、とてもいい上司だと思っていた。
しかし、自分の実績をあげるために、私が販売したものまで自分の手柄にしていると気づいた時、気持ちが一気に冷めた。
嫌な事まで思い出してしまい、ムッとしながらカフェラテを飲み込んだその時、私のサンドイッチを見つめながら貴斗がぼそぼそと喋った。
「……世話ついでにもらってやってもいいぞ」
「え、ダメだよ。これは私のなんだから。残さないもんね~。足りないのなら、追加で注文しておいでよ」
「あのな、俺が欲しいのはサンドイッチじゃなくて……」
「じゃあ、何?」
そう言って貴斗を睨んだその時、耳元で不快な音が聞こえた。アブか蜂の羽音だ。