ミツバチジュエル
☆プロポーズをもう一度☆
「……おーい、聞こえるか? そろそろ目ぇ覚ませよ」
耳元で呼ばれて、うるさいと思いながら仕方なく目を開いたら、心配そうな貴斗の顔がそこにあった。
きょろきょろとあたりを見まわした私を見て、教えてくれる。
「市立病院だよ。蜂に刺されて救急車で運ばれたんだ」
「……何それ。かっこ悪すぎ」
「咲、昔プールで蜂に刺されたことあったの、覚えてるか?」
プールで……そういえば小学生の頃、遊園地の屋外プールで刺されたことがあったっけ。あの時、貴斗の家族とうちの家族みんなで行ったような。
「うん、貴斗と私のお兄ちゃんと一緒だった」
「やめろって言ってんのに『このままじゃ貴斗が刺されちゃう』とか言って、俺の近くの水に浮かんだ蜂を素手で掬い上げたよな。で、やっぱり刺されて大泣きしてたっけ」
「ははは。お恥ずかしい」
……それでもあの頃の私は、貴斗を守りたかったのだ。
自分が刺されてしまったけれど、刺されたのが貴斗じゃなくて良かったと思ったっけ。