ミツバチジュエル


こんなふざけた態度じゃなく、ちゃんと伝えないと。

貴斗にそれを言うのはかなり照れるけど。


「……貴斗、ごめんね。助けてくれて、ありがとう」


普段言いなれない『ごめんね』と『ありがとう』だけど、確か小学生の頃まではよく言っていた気がする。

いつからかな、素直に言えなくなったのは。

私からの謝罪と感謝を聞いて、きっと貴斗は勝ち誇るはず。悔しい。


「わかればいいさ……助かってくれて、ありがとう」


心底ほっとしたような表情を浮かべて、見つめられる。

小さい頃から見慣れた顔が、何だかいつもと違って見える。

笑った時、ちょっと眉が下がるところも、男の人にしては長いまつ毛も、昔矯正していたお蔭で完璧な歯並びの口元も、いつもと同じはずなのに。

シャツについていた黒いクマのマークが、黒い馬と騎士のマークに変わっても。

あれから四半世紀近く時が過ぎていても。

やっぱり私の方がずっと、彼に守られている。


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