ミツバチジュエル
☆ミツバチジュエル☆
それから1週間後。
閉店1時間前の店内で普段と変わらず仕事をしている私の前に、貴斗が現れた。
今日は珍しくスーツ姿だ。
何だろう、職場でお役人の視察でもあったのかな?
直接会うのは、あの病室以来だった。
「いらっしゃいませ」
営業スマイルで動揺を必死に隠した。
あれから何の音沙汰もなく、こっちがメッセージを送っても無視ってどういうこと、と詰め寄りたくなったが、仕事中ゆえ我慢。
「本日はどのようなものをお探しですか?」
接客の基本、目を見て話す。すると、貴斗は神妙な面持ちでこう言った。
「実は先週、訳あって指輪を一つ壊してしまったんです。それで、代わりのものを購入したいのですが……」
まさか、この間切断した私の指輪のこと?
更なる動揺を抑えるのに、私はかなり必死だ。