ミツバチジュエル


「わかりました。どのような指輪をご希望ですか?」

「大卒公務員の給料三か月分のダイヤモンドリング」

「それって、何? どういう事?」


つい素に戻って大きな声を出してしまった。

質問する私に、貴斗は腹黒い笑みを浮かべてこう付け足した。


「家族という名の外堀はこの一週間ですぐ埋まりました。何しろ昔からの付き合いなので。あとは本人が素直になってくれたらそれでいいのです」

「ええっ? ちょっと、意味がわかんない!」

「アナフィラキシーショックになった時、すぐに適切な処置ができます。もしも子どもが生まれて食べ物を喉に詰まらせたら、ハイムリック法で出しましょう。災害時、家に居られないことだけが不安要素でしょうが、そこは備えを万全にしてクリアします」

「な、なんの話がわかんないよ!」

「……ここまで言われてまだとぼける気か? 俺ほど咲の結婚相手にぴったりな男はいないって言ってんだ! 解ったか!」

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