ミツバチジュエル
側で見ていた人達から喝采を浴びた私は、店長の粋な計らいで『明日はゆっくり休んでいいですよ』と、休暇を頂いた。
……その日の夜。
四半世紀もの付き合いの私達が、お互いの素直な心と身体に初めて触れたのは言うまでもない。
「咲、はじめて、なのか?」
「はじめてに決まってるじゃない! 三歳の時に約束したの、忘れちゃった?」
「もちろん、覚えてる。だから必死になって、咲を守れる男になろうとした。まあ、今夜は守るというより攻める、なんだろうけれど」
意地悪く笑う貴斗は、三歳の頃の可愛らしさなど全く残っていない。
だけど……あの頃の貴斗にそっくりな男の子を授かるなら、それも悪くない。
だから言ってあげよう、彼が待ち望んだ言葉を。そして聞かせてもらおう、私が待ち望んだ言葉も。
「貴斗のお嫁さんにしてください」
「ずっと咲が好きだった。これからも変わらない」
いつも彼に泣き顔を見せる時は、悔し涙だった私。
今、初めて、彼の腕の中で嬉し涙を流している。
幼なじみとの蜜月は、大抵ビターで毒も混ざる。
だけど時々蜂蜜以上の甘さが堪能できる。
そのギャップがたまらない、かも。
【ミツバチジュエル・了】