ミツバチジュエル
そんな不毛なことを考えていたら、お客様がカウンターに現れた。
「すみません。これなんですけど……元に戻せますか?」
おずおずと目の前に差し出されたのは、アルファベットのCの形になってしまったプラチナの指輪。切断して、無理やり指から外したのだろう。
持ち主である女性を拝見したところ、お腹のラインがふっくらとしている。
私はこの指輪がなぜ切断されてしまったのかという事情が掴めた。
「調べてみますので、少しお時間をいただけますか?」
ご夫妻に椅子を勧め、お預かりした指輪をさっと見てみる。
表面に付いているダイヤは無事だった。だけど裏面がちょっと問題かも……。
お客様にどう伝えるのが一番適切であるか考えながら、小さくため息をついた。
「お待たせいたしました」
「それで、どうなんですか?」
「ほぼ元通りに修理できると思いますが、一か所だけ難しいところがあります」
「そんなに難しいんですか? もう二度と元に戻らないということですか?」
奥様の表情が次第に暗くなっていくのを見て、私は少し焦りつつ、正直に話すことにした。
「裏側のブルーダイヤが、切断面ギリギリのところにあるため、少し位置を動かして修理することになりそうです」
私がそう告げると、奥様はまた、身を乗り出して質問された。