ミツバチジュエル

「それでも、直るんだったらいいです! お金はどれくらいかかりますか?」

「お客様のリングはプラチナ九〇〇ですから、それを足しながら修理することになります。ブルーダイヤの位置も調整すると、だいたいこの位に……」

電卓に数字を打ち込んで提示したところ、ご夫妻は顔を見合わせ、それからひそひそと相談をはじめた。


「どうする? この値段だと、新しいリング買えそうだぞ……」

「だって、結婚指輪だよ。一生大事に使うものでしょ?」

「これから出産で金もかかるし、どうせしばらくつけられないんだから、修理するにしても後の方がいいって」

「でも……」

泣きそうな奥様を見ていると、居たたまれない気持ちになる。

切り方を少し変えてくれるだけでも、修理代金はかなり変わるというのに。
この指輪を切った人間に怒りを覚えた。

「指輪は待ってくれますから、ご出産を終えて、指のサイズももう一度測りなおしてから修理される方がいいかも知れませんね」

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