【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
そうそう、とうなずく由真。
深く考えてなかったけど……言われてみれば、こういうことは何度かあった。
「俺らが追放されたあのとき……
嘘をつくのが下手なのに、十色さんと一緒についてた嘘は俺のことも完全に騙してたからね」
「……軽い二重人格とか、なのかな」
「二重人格っていうか……ペテン師っぽい」
なんというか、本気で嘘をつく時はどうがんばっても見破れない。
……なのに、普段の嘘はおどろくほど隠すのが下手で、いっそ、わざとなのかと思うほどに隠せてない。
「まあ色々改善できてる点もあるし、いまはそっとしといて。
……もう莉胡に嘘をつかせるようなことも、まずないだろうから」
大丈夫だろうと目の前に置いた数学の続きをやるため、莉胡の寝顔から視線を外すと同時に。
ぴくりと視界の端で莉胡が身体を揺らしたかと思うと、「電話、」と部屋を出ていく。どうやらポケットの中で、スマホが電話を受けて震えたらしく。
「おかえり」
すこしして帰ってきた莉胡にそう声をかけると、「ただいま」と答える彼女。
何もなかったように席について、ふあっと欠伸をひとつ。
「莉胡ー。お前手空いてんなら前の続き」
「……ミヤケ前に渡した問題ちゃんとやった?」
「やったっつーの!
お前俺のこと馬鹿にしてんだろ!?」
「してないわよ。
見てあげるから貸して……、ふあ、ねむい、」
「……お前なんでそんな疲れてんだよ」