【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「好き、」
「……知ってる」
自分の中で湧き上がる衝動のままに、莉胡に触れたくなる。ちらりと時間を見れば、まだ晩ご飯前。
莉胡が俺の部屋にいることが増えて、そのたびにおばさんはひとりになってしまうから、最近ではうちの家で4人そろって晩ご飯を食べることになっていて。
「お母さん達……いるよ?」
「……知ってるよ」
帰ってきたときにはすでにおばさんも来てたし。
仲良いから、いまも下で会話してるんだろうけど、なんていうか……ぜんぶ後まわしにして、莉胡がいい。
誘うように口づけたら、ちゃんと応えてくれる莉胡がかわいい。
ため息とともに莉胡の背中を床に触れさせて、指を絡める。……ああもう、これだから、中途半端な欲望は嫌いだ。
「だめ……」
強引に押し進める気もないのに、引き下がる気もない。
広がる莉胡の髪を見下ろして、思ってもいないのに俺を拒む言葉を口にする莉胡に、逆にちょっと燃える。……欲しいって、言わせたくなる。
「ほんとにだめ?」
「……だって、お母さん達が、」
「そんなの我慢すればわかんないって。
そもそもどっちの親も、割とこういうの反対しないでしょ?」
俺にどれだけ信頼を置いてるのか、"千瀬なら大丈夫"と念を押されて。
たぶん……俺が欲に耐えきれなくて莉胡に触れてることも、親は気づいてると思うけど。
それでも「だめ」と首を横にふる莉胡。
本気で拒んでないだろうけど、俺だって本気でガツガツ求めてるわけじゃないし。仕方ないかと小さく息をついて、莉胡の胸元に光るネックレスを撫でる。