【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「俺に言っとくこととか、ない?」
信じてるけど、莉胡が自分から言ってくれるかどうかは別なわけで。
たずねてみれば、彼女は「んー」と視線をさまよわせてから、俺をじいっと見上げた。
「今度、ミケともう一回お見合いだって」
「はあ? ……なんで」
「前回、ちゃんとお見合いになってなかったのがお互いの両親にばれちゃったみたいで……
でもほら、今度はちゃんとわたしのお父さんも来るから……」
だいじょうぶだよ、と言った莉胡。
おじさんがいるなら危険な目には逢わないだろうけど。……むかつくじゃんか。俺が平凡な家に生まれてなかったら、婚約者だって堂々と言ってやるのに。
噛み合ってくれない感情にイライラする。
莉胡が好きだって言ってくれただけじゃ満たされない自分自身にも腹が立って仕方ない。もっと、なんてそんなの、欲深いにも程がある。
「……あーも、すっげえ触れたいなんだこれ」
「え、えと……千瀬さん……?」
「お前なんなの、なんでそんなかわいいの」
「ええ……」
俺を困ったように見上げる莉胡。
そんな顔するようなこと言ってんのはわかってるけどさ、ほんと、なんでそんなにかわいいの?俺のことどうしたいの?
「ゴールデンウィークに旅行でも行っとくんだった……」
莉胡をもっと独り占めしたくて堪らない。
次の長期休みって夏休みだし、となんとなく悶々としていたら、莉胡がそんな俺を見てくすっと笑った。