【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-



先に起き上がって、莉胡を起こす。

それから下に行けば、案の定「仲良しねえ」とか「千瀬意外とまわり見えてないわよねえ」とか、散々冷やかされたけど。



莉胡が別の男と付き合っているときに質問攻めにされて恥ずかしがってる表情を見ていたあの頃よりはよっぽどいい。

どうせ隠したって無駄だろうから「俺の方が盲目なだけでしょ」って言っておいた。莉胡の顔が赤くなってたから俺の勝ちね。



「……ねえ千瀬、あのね、」



「ん?」



「……実は最近ずっと思ってたことがあって」



質問攻めにされた夕食をなんとか終わらせて、莉胡が一度家にもどって風呂に入ってる間に俺も自分の家で風呂に入った。

そのあと部屋にもどってきた莉胡が、もこもこのルームウェアを着てぴったりくっついてくるけれど。その表情はどこか深刻そうだ。



あまり見ることのないその真剣な表情に、つられて表情を固くすれば。

莉胡が口にしたのは、意外な一言で。




「HTDのトップ……

白葉、って名前だったわよね?」



「……うん、白葉 万智だけど」



「……やっぱりどこかで聞いたことない?」



うーん、と記憶をさかのぼる莉胡。

俺の記憶は散々さかのぼったけど、残念なことに一致する男はいなかった。だから、知り合いではないはずだけれど、莉胡は聞き覚えがあると言う。



しかも違和感を感じたのは最近らしく。

なんかあったかな、と思い出そうとしてみるけど、特に何かがあった覚えはないし。



「勘違いじゃない?

散々メンバーの資料も読み返したけど、気になる点なんてなかったよ」



「……あれに載ってた情報は?」



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