【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
そう尋ねられて、東の幹部室に置いてあるファイルの中身を思い出す。
たしか載っていたのは名前と生年月日、学年、いま通ってる学校の名前。高校生は出身中学も載っていたし、ざっくりとだけどどのあたりに住んでいるのかも書いてあった。
あと、頭脳戦が得意なのか体力勝負なのか。
割と俺らに渡せば戦いにくい情報がわんさか載っていたし、砂渡の情報もちゃんとあった。残念ながら家柄の情報までは載ってなかったけど。
それらを一通り莉胡に伝えれば、しばらく考え込んだ莉胡ははっとしたように顔を上げる。
どうしたの?と聞けば、「ちょっと待ってて!」と俺を残して部屋を出ていく彼女。
1分もしないうちにもどってきた莉胡の手には、おそらく俺の家のリビングにでも置いてあっただろうアルバム。
──俺らが通っていた幼稚園の、卒アル。
「……幼稚園?」
「あの人物ファイルを見たときは何も思わなかったのに……
"しらはまち"って名前には、違和感があったの」
ぺらぺらとそれをめくる莉胡。
そんなヤツいたっけ、なんていう俺の疑問は。
「っ、あった、」
莉胡が指差したその写真を見て、一瞬で解決した。
どうして。……どうして、気づかなかったのか。
俺と莉胡と、幼稚園で同じクラスだったその男。
ずっとずっと思い出せなかったのは、莉胡が確かその男の名前を「まーくん」って呼んでたからだ。だから、万智って名前には聞き覚えがなかった。
……なのに。
この写真を見た瞬間、嫌でも思い出せる鮮明な記憶。
「……千瀬?」
「……、」
ぐらりと視界が揺れるような気分だった。
途端に気分が悪くなって、莉胡が不安そうに名前を呼んでくる。だいじょうぶ、と笑ってみせたけど、莉胡はさらに不安の色を強めた声で俺の名前を呼んだ。