【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「俺……
ほんとは、誰よりも莉胡のこと長く好きだったっていうの、結構自慢だったんだよ」
「………」
「でももし……
この男が、本気で。昔と変わらず、ずっと、莉胡のことを好きなんだとしたら、」
──俺は、この男に時間では勝てない。
だってこの男がシンデレラで王子様役をやりたがった理由は、莉胡のことを好きだったからだ。俺よりもずっとずっと、莉胡を好きになったのが早い。
「ごめん莉胡……俺、」
唯一の自慢だった。
莉胡の隣にいられる、唯一の自慢だった。十色さんと春とすでに交際していた莉胡の経験の中で、莉胡のいろんな"はじめて"は俺じゃなかったから。
だから、時間だけが唯一の自慢だったのに。
「いまちょっと……自信なくした、」
「千瀬、」
「十色さんがいて春がいて……
莉胡のことをずっと、俺よりも長く好きでいた男がいるなら、」
俺に勝ち目なんかない。
電話で砂渡が『莉胡ちゃんのこと相当好きみたいだよ?』と俺の話をしたとき。
電話越しに聞こえた白葉 万智の『はっ、どうせ俺には負けるっての』というあのセリフ。──あれは、自分の方が長く片思いしてるっていう、自信があいつにあったからだ。
根拠のない口先だけの言葉じゃなく。
……自分の方が先だという事実を、知っていたから。
「ごめん……、ごめん、莉胡」